蒼穹の誘惑
「クソッ!」

浅野は手渡された書類を投げつけた。

自分とみずきはそんな関係ではない、彼女を愛している、そう言いたかった。

だが、実際自分は、父が言うように、彼女に利用され、骨抜きにされただけだ。

分かっていたことだが、父に馬鹿にされたように指摘されれば、自尊心が傷ついた。

浅野にとってもこのビジネス提携は大きい。あれだけ名の知れた会社と提携することは、浅野にとっても非常にメリットがある。

利用価値があるのはお互い様だ。

浅はかな恋愛感情など捨て置き、ビジネスライクに徹っするべきなのは解っている。

だが、頭で理解しても心がついていかないのが、恋というもの-----

浅野はみずきが忘れていったブルーサファイアのピアスをじっと見つめた。

「みずきさん……」

擦れる声で彼女の名前を呼べば、切なさに顔が歪んだ。



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