蒼穹の誘惑
デスクの上の郵便物を手早く片付け、二日振りにプライベート用のスマホを手に取ると、急に着メロが鳴り響いた。

着信相手を確認すると、浅野の身体が一瞬にして強張る。

先ほど父と対面したときはとは違った緊張感が走り、何も答えず、通話ボタンだけ押した。

「----あなたの目的は一体何です?」

怒りを悟られては相手の思うツボだと解っていても、声が震えるのは抑えられない。

スマホを握りしめる手はじっとりと汗をかく。

「父から渡された書類の中身は確認しました……はい……」

電話先の相手から一方的に与えられる情報に、浅野の顔は怒りに紅潮していく。

「わかりました。善処します」

そう低く零すと、通話は終了した。

脱力するようにソファに座る浅野の表情からは、もはや感情らしいものは読み取れない。

ただスマホを握りしめ、茫然自失な状態でみずきの訪れを待つしかなかった。



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