蒼穹の誘惑
「みずき、忠告したはずだぞ?」

栄次郎が唸るような低い声で言い放つ。

「そんなに私のやることが気に食わないのですか?」

「おめでたい奴だ。お前が出来ることなどたかが知れている。身の程をわきまえろ!長谷川には長谷川のやり方がある。私は兄を支え、今までそうしてきたのだ」

ここ一年、何度も言われた台詞だ。この長谷川を支えてきたのは自分だ、と。

今のお前の地位は私が継ぐはずだった……暗にそう言われ続けてきた。

別に、社長というこのポジションにしがみつきたい訳でもない。父の為などという甲斐甲斐しい感情もない。

だが、みずきの負けず嫌いな性格は、良い時には功を奏し、悪い時には仇となる。

売られた喧嘩は高値で買う主義のみずきだ。

そして、余計なひと言まで追加する。



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