蒼穹の誘惑
高層ビルが列なるこの景色をぼんやりと眺めながら、長谷川みずきは窓の傍に立った。

その姿は凛として美しく、自信に溢れている。

ビルの間から見える青空、そして差し込む朝日。夜になればそこは、都会の摩天楼の大パノラマを映し出す。

この街に働く何十万という人間の中で、選ばれた者のみに与えられる特権-----

たが手にしてみれば、何の興奮もないと思う。

みずきはため息をつき、何か諦めるように窓に背を向け社長専用のアームチェアーに座った。


(もう一年になるのね……)


思い詰めたように手元の書類に視線を落とせば、コンコンとドアが鳴った。

もうこんな時間か、とまた溜め息が出そうになるのを堪え、笑顔を貼り付けた。



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