蒼穹の誘惑
「だから私のやること成すことの全てに反対なさるのですか?高度経済成長時と同じやり方が今の時代に通じるとでも?古き良き時代にノスタルジックになるのは結構ですけど、新しい時代の波を読むこともお忘れずに」

栄次郎の口元が怒りでわなわなと震えるが、みずきは止まらなかった。

「実の姪に対して、高宮を抱えてまで……やることが姑息だわ。叔母様には、可愛い姪を心配する優しい叔父のふりをしているみたいですけど……」

牽制もあった。

そっちが高宮を使うなら、こちらは幸子を使おう。

幸い彼女はみずきを溺愛している。

「何とでも言えばいい。高宮は会社の利益を重要視している。新しい業務提携も順序とやり方を間違えなければひとつの新事業になるだろう」

怒りを抑え、唸るような低い声を発しみずきを睨み付ける。その瞳には姪に対する愛情の欠片も見えない。

「叔父様は私では無理だとおっしゃるの?」

「あぁ、お前では、浅野との業務提携は失敗する……浅野が契約書に印を押せばの話だがな」

「どういう意味ですか?」

急に不敵に笑う栄次郎に、背中に嫌な汗がつたう。



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