蒼穹の誘惑
「浅野は契約に合意しないだろう、それだけははっきり言えるということだ」

「何を、したの?」

「お前に話す必要はない。身を滅ぼす前に手を引け」

今度はみずきの身体が怒りに震えた。

「それが会社の為になると?」

「あぁ、私はそう信じている。浅野と寝てまでご苦労だったな。だがもうお遊びの時間はお終いだ」

栄次郎の確信めいた態度に、怒りを露わにする前に漠然とした不安が襲いかかかる。

胸倉を掴んで、何をしたと吐かせたい衝動に駆られたが、ぐっと手を引込め自分を落ち着かせた。

みずきは、ディナーを準備していた幸子に急用ができたと告げ、挨拶もそこそこに叔父の家を飛び出した。



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