蒼穹の誘惑
「浅野君、恥を承知で尋ねるわ。うちの副社長はあなたに何と言ってきたの?」

みずきは、もう熱く見つめてはくれない瞳をじっと見つめ、率直に尋ねた。

「必死ですね?」

自嘲めいた笑いを浮かべ、浅野は冷たい表情で続けた。

「長谷川エレクトロニクスとの提携は我が社にとってもすごく重要です。だから、こんな天秤にかけることはしたくなかった……」

「天秤?」

「あなたは本当に何も知らないのですね……」

「浅野君、言っている意味がわからないわ」

緊張から喉がひどく乾き、コクリと鳴る。

「僕はあなたが好きです。あなたが僕をこの提携の為に利用していたのも分かっていました。でも、それでもよかった」

浅野の急な告白に、みずきの瞳は動揺に揺れた。

こんな真っ直ぐな瞳で想いを告げられたことなど今まであっただろうか。

こんな時に何を、と思いながらも、浅野の切なげな眼差しに何も言えない。

浅野は何も答えず押し黙るみずきの前に一つの封筒を置いた。

「今日届きました。中を見れば分かります」

みずきは恐る恐る封筒を手に取り、中を確認する。

「写真?なっ……!これ、誰がこんなものを……っ!?」

みずきの手が震え、封筒からパラパラと数枚の写真が落ちる。そして、更にその中から彼女の交際関係を隠し撮りされた写真が次々と出てきた。

中には目を覆いたくなるような赤裸々な写真もあった。



< 203 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop