蒼穹の誘惑
「あなたが部屋を出て、このピアスを渡そうとすぐに追いかけました」

「-----え?」


(追いかけた?)


あの後すぐといことは……そう思い返し、みずきははっとする。

「そう、そして僕は見てしまったんです。あなたがあの秘書とキスをしているところを……」

「あ、あれはっ……」

「あれは何です?」

浅野の声が一段と低くなり、みずきの背に緊張が走る。

「-----彼とのキスはあなたが思っているようなものではないわ」

「本当に?」

「ええ……」

高宮と自分は別に特別な関係ではない。その写真に写っている男たちと同じことをしていただけだ。

それは、みずきの気持ちとは関係なく、紛れもない悲しい事実だ。



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