蒼穹の誘惑
みずきは社長室の前に立つと、高宮を振り返り、意志の強い瞳で彼を見上げた。

「一人で考えることがあります。部屋には入ってこないで」

決意を持ったその声色は、高宮の全てを拒絶していた。

「了解しました。隣の秘書室で仕事をしていますので、何かありましたら内線でお呼びください」

「わかったわ。もう3時なのね……」

チラッと腕時計を見て考える素振りを見せる。

「今日は遅くまで残ります。高宮君はそのまま先に帰ってください」

あえて、受付秘書の前で事務的に伝えた。

高宮が何も反論できないように-----

業とらしい溜息と共に、「了解しました」と聞こえたが、みずきは振り返らず、そのままドアを閉めた。



< 213 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop