蒼穹の誘惑
社長室に独り籠り、まずみずきが始めたのは、株主リストと現役員の持株取得率のチェック。

栄次郎が何かアクションを起こしてくるとなると、来月開催される株主総会の前の筈だ。

一番恐れているのは、栄次郎が進めている、家電製品部門の買い手でもある台湾企業を使って、大規模なM&Aが行われること。

まさか、会社をそんな危機にさらすことはないと思うが、用心したにこしたことはない。

栄次郎の株の所有は現在7%で、2%を妻の幸子が所有している。高宮に9%を譲渡したと聞いたとき、もしや、と思った。今、栄次郎は、定款第六条の株主としての議決権を行使できない。

それでも、みずきに脅しとも言えるほどあんな強気の態度でくるのだから、何か特別な切り札があるにちがいない。

恐らく、何かあれば、幸子から持株を譲渡してもらうか、彼女の実家が持つ長谷川の株を保険に考えているのは確かだ。

だが、それ以上の何かが栄次郎をあそこまで大胆に動かしている。

それを突きとめなければならない。



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