蒼穹の誘惑
高宮は何か感情を読み取るようにみずきをじっと見つめる。

その鋭い双眸に喉の奥がコクリと鳴る。

ただ見つめられるだけで、全ての感情を露わにされそうで、心が震えた。

その沈黙を先に破ったのは、高宮のふっと緩めた口元から漏れた溜息。

それと同時に「コーヒーでも淹れます」と聞こえたが、みずきは慌てて立ち上がり、それを制した。

「自分で淹れるから、高宮君は帰って」

高宮が居ては調べ物もできない。できればさっさとこの部屋から出て行って欲しい。

チッと舌打ちが聞こえたかと思うと、急に腕を引かれた。

「懲りない人だ……」

怒気をはらむその声色に、ハッと顔を上げれば、彼は少し苛立っているようだった。

みずきは高宮の腕を振り払おうとしたが、彼は冷酷にもその腕を背後に回し締め上げた。

「い……っ……な、何を……」

「少しは大人しくしていたらどうですか?」

「誰が……っ……」

「何を調べているかと思えば……」

高宮は、先程みずきがプリントアウトした株主資料をプリンターから取り出すと、それに視線を落とし薄く笑う。



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