蒼穹の誘惑
「時間がありません、と何度言えば良いのですか?」

午後からの商談を目前に高宮は少し苛立っているように見えた。

それもそのはず、約束の時間まであと15分もないというのにみずきは銀座に車を止めさせ、お馴染みのブランドショップでファッションショーをしているのだ。

嫌な予感は当たった。この我がまま社長が、大人しく言うことを聞くはずがないことは、この一年で学習したはずだった。

最近では掌で転がすように言うことを聞かせることができたので、鷹をくくっていた、と高宮は自嘲する。

「あなたは時計の見方がわからないのですか?早く準備をしてください」


(嫌味なヤツね……この命令口調がムカつくわ!)


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