蒼穹の誘惑
「往生際の悪い方だ。あなたは何も分かっていない。本当の脅威が誰なのかも……」

「意味がわからないわっ!あなたと副社長以外に誰がいると言うのよっ!?」

「だから、あなたは、頭は悪くないのに浅はかだと言うのです」

ひどく頭にくることを言われているが、ふと高宮の腕が緩み、その視線がみずきの首元へ落ちる。

腕を解放され、とっさに髪で首筋を隠すが、遅かった。

「赤くなっていますが、どうしました?」

「何でもないわ……」

「そんなにはっきりと痕がついているのに?」

「…………」

「浅野ですか?」

首筋を押さえたままみずきは何も言わない。それを肯定と見なしたのか、高宮が呆れたように口を開く。

「大人しくしていればいいものを……彼の父親が誰かご存じですか?」

「-----?」

父親と何が関係あるのか、と見上げれば、盛大な溜息が降ってきた。



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