蒼穹の誘惑
「副社長は、叔父は、会社の存続の危機を犯してまで、社長の地位を手に入れたいの?」

「さぁ、どうでしょう」

「そうね、あなたが言うわけないわね。その資金運営目的のダミー会社は、インターステイトのM&Aをスムーズにするため?それとも対抗するため?」

高宮が簡単に答えてくるはずなどないと分かっていたが聞かずにはいられなかった。

あれ程の大きな組織が相手では、みずきが今更どう足掻いても何もできることはないだろう。

みずきが浅野の名前を挙げた時から、全てはレールの上で踊らされていたのだ。

「長谷川を立て直そうとしてきたことが……」

みずきは力なく、その場に座り込む。

「あなたが心配しなきゃいけないことは、そんなことではない。言っている意味はわかりますよね?」

高宮は、みずきをソファに座らせ、そっと彼女の首筋に触れる。

不意打ちで優しく触れられ、肩がピクンと揺れた。

「あなたが-----あなたが私にしたことも大して変わらないわよ」

震える声を誤魔化すように腕をさすって見せた。

じっと見つめられ、全神経が触れられた箇所に集中するようだ。



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