蒼穹の誘惑
その瞳に吸い込まれそうになり、はっと我に返る。

「手……離しな、さい……」

「失礼しました。あなたは少し短絡的で浅はかなだけですよ」

高宮はすっと手を引くと、低く笑う。

短絡的で浅はか……それを頭が悪いという言うのではないだろうか。

今更ながら悪態をつくこともできず、みずきは口を閉ざした。

どうせなら、とことんバカな女を振舞ってやろう、期待通りに。そんな思いがあったのかもしれない。

「今からランチして商談となると、終わるのは4時くらい?」

「そうですね。商談の進み具合にもよりますが」

「4時なら会社に戻る必要はないわね?」

みずきは口元に指を置き、考えて見せる。

「マンションへ直帰されますか?」

「そうするわ。ねぇ、帰りは待ってなくていいから。この意味わかるでしょ?」

みずきは小悪魔のような微笑を湛える。


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