蒼穹の誘惑
(1)

肌寒さに、何か着るものがないか手を伸ばそうとしたとき、全身に差すような痛みが走り、みずきは目を覚ました。

ぼんやりとした視界に見えるのは見慣れないログハウスの天井。

身体を起こそうとして、初めて自分が手足を拘束されていることに気付いた。

頭が割れるように痛く、吐き気がひどい。目を開けているのが辛く、再度重い瞼を閉じる。

朦朧としそうな意識の中、みずきは頭の中を懸命に整理した。


(夢ではなかった……)


大きく深呼吸し、できるかぎり酸素をとりこむ。

少しでも身体を動かせば、激痛が走るが、そのお陰で意識は手放さずにすんだ。

徐々に、浅野をホテルのエントランスで車に乗せてからの記憶が、脳裏に蘇る。



< 281 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop