蒼穹の誘惑
数々の修羅場を潜り抜けてきたみずきの直観が働く。

これは、プロによる犯行だと。

一連の手馴れた行動に、もっと大きい力が働いているような気がした。

薬品をかがされたのは初めてだった。

アルコールをかなり接種していたせいか、薬品と混ざり、吐き気と頭痛がひどい。

目隠しは今は外されている。

恐らく、連れてくる間に目が覚めたときの用心に目隠しをしただけだろう。

だが、みずきの視界はまだはっきりしていなかった。頬を叩かれたときに眼球近くの毛細血管が切れたのだろうか、片方の目は、物が二重になって見える。

この部屋には窓もなく、唯一の出入り口のドアは勿論閉められているので、全くここがどこかわからない。少しかび臭いにおいがするが、外からではなく、このログハウス特有のものだろう。

家具らしきものは一切なく、みずきは床に寝かされていた。

時計も外され、勿論携帯も何も持っていない。

分かるのは、ここは山奥だということ。



< 284 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop