蒼穹の誘惑
やはり何かおかしいと感じる。

待合せ場所に、時間指定もなかった。

まるで、高宮が必ず来ると確信しているような相手の言動と行動。

そして、警察に通報しないということも―――

高宮個人を指定してきていることから、容疑者は、浅野、そして、副社長の栄次郎の二人に絞っていた。

浅野はまず、第一の容疑者である。

みずきと一緒にいるところを目撃されていることからも、彼の動機は明白である。

みずきに対する執着心から、愚かな行動に出たのだろう。日本を離れると聞き、焦ったのかもしれない。

自分を呼び出して何をしたいのかは不明だが、高宮自身、浅野の嫉妬心を煽る行動をしたことがある。

みずきが心を寄せているのは自惚れなくても、自分であることは分かっている。それに浅野が気付いたということだろう。

だが、逆恨みと結論づけるには余りにも単純すぎる。



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