蒼穹の誘惑
浅野とみずきが談笑しているところへ最初のアミューズ・グールが運ばれた。シェフ・ド・ランが料理の説明を終えると、みずきは嬉しそうに目を輝かせる。

「おいしそうね」

「みずきさんは、もうフレンチなんて飽きているでしょう?」

「そんなことないですよ。私これでもファミレスにも行くのよ?」

「本当ですか?意外です……」

行くわけないじゃない、と心の中で呟きながら、食べなれたオマールエビのテリーヌを口にする。

みずきはフレンチが余り好きではなかった。苦手と言うより、イタリアン同様食べ過ぎて辟易している、といったところだ。

かと言ってファミレス等行くわけもないのだが……

まずは、目の前の獲物の警戒心を解き、射程距離に入らなければならない。その為にはパセリの嫌いなみずきも、このパセリとバジルたっぷりのヴェールソースをテリーヌにからめておいしそうに食べることができる。


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