蒼穹の誘惑
「社長?」

「-----え?」

「どうしました、ぼんやりして?」

高宮に呼び掛けられ、現実に戻される。

「あぁ、ちょっとね。今からあの役員たちに思いっきり叩かれると思うと嫌気が差してね……」

「弱気とは珍しいですね。人に何を言われようと気にしないあなたが、らしくない」

「高宮君、あなたってホント失礼よね」

「フッ、何を今更」

口角を上げてみずきを見下ろす姿はとても「社長付の秘書」には見えない。

どちらかというと、小うるさい教育係といった感じだ。

「年下のくせに生意気」

「だったら年上の従順な秘書を探したらどうですか?」

一介のしかも年下の秘書が社長に対してここまでズパズバとものを言うのも異様な光景である。

だが、数連なる優秀な秘書の中から高宮を選んだのは、誰でもないみずきだ。



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