蒼穹の誘惑
「その口がなければ最高の秘書なのに……」

みずきは高宮のその秀麗な横顔を眺めポツリ呟く。

「何か問題でも?」

「いいえ、ないわ」

この男は慌てるということがあるのだろうか。

みずきの我がままに時々苛ついた表情を見せることはあるが、そのポーカーフェイスが崩れることはない。

ふと、みずきの悪戯心がうずうずとくすぶる。

「ねぇ、先週は楽しかったわね?」

「先週?何かありましたか?」

「もう忘れたの?ベッドであんなに熱い夜を過ごしたのに」

「そうでしたか?」

高宮は視線をモニター画面に移したまま、冷静に会議の準備を続ける。


(表情ひとつ崩さないんだから……)




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