幼き神は涙さえ演じて

 だって、誰かが茶神のために祈らなければ。

 誰かが彼を真っ黒な世界から救い出してあげなければ。

 そうしなければ、茶神はずっと冷たい世界で蹲ってしまう。

 抜け出すことも知らず、ずっと。

 そんなことは避けたい。

 ただ、普通の日々を過ごす。

 平凡でいいではないか。

 だって、茶神に罪はない。

 救われる資格を彼は持っているのだから。

 茶神はマリーの手に触れて、笑った。


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