魔王
悠楽は自分を見上げ、聞いてくる一郎のノートをのぞき込む。

するとーー、やはり意味不明な事が書いてあった。

「…この『パフアダー、マダラサラマンダー』というのは…一体なんだ?」

「見てのとおりです。問題の答えですよ。…問題と言っても…入試問題の、ですがね」

「ちょっとかっこいいっぽく言うんじゃないよお前は」

軽く一郎の頭を小突きながら言う悠楽。

その口調には若干呆れが混じっているように聞こえる。

「パフアダーとマダラサラマンダーって毒蛇と毒サンショウウオの名前じゃねーか。今は何の授業だ?理科か?生物学か?」

「数学です。…何言ってんですか先生。自分の教えている教科もわからなくなりましたか」

フッと鼻で笑いながら言う一郎に苛立ちを覚えながら、それでも表情を変えないようにする。

その心中では「キレたら負けだキレたら負けだ」と繰り返していた。

「あのな、お前俺を馬鹿にしてるだろう」

「馬鹿になどしていません。魔王を馬鹿にした時点で配下の死は決定したも同然ですからね」

「じゃあその微笑を止めろ。それと俺魔王じゃないから」

「え…ッ、そうだったんですか!?」

「…やっぱり馬鹿にしてるだろう」


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