魔王

一時的に教師がいなくなり、生徒のみとなった教室内。

そういった状況下では、無意味にそわそわするのが学生というものである。

「なあ。なあ。ドアに黒板消し仕掛けとかねぇ？チョークの粉でバフバフにしてさぁ」

「なに小学生みたいなことしようとしてんだよ～。中学生らしく、やるならもっと派手に～バッフンバッフンくらいの心構えで～」

「今いいこと言ったよお前。お父さん嬉しいぞ。うっうっ…」

「同い年のお父さんってどんな？」

「妄想だろ妄想」

「想像妊娠的な奴ね」

「いや違ぇよ、想像妄想だよ」

「なんだそれ。同意語ならべて四字熟語気取りか？そうなのか？ん？」

「気取りじゃねーし、れっきとした四字熟語だしィ。漢字が四つならんでりゃあ四字熟語なんだよ」

「意味が無ければ四字熟語とは言えないと思いますが。その点、焼肉定食はまだいいと言えますね。『焼肉の定食』という意味がありますから」

ツッコミらしいツッコミを失った3-5の会話は、暴走し始めたら止める術は無いに等しい。

ガヤガヤとした喧騒は止まるところを知らなかった。