魔王
只今の時刻は10時15分。

この時間は授業が入っていないため職員室でデスクワークをしていた。

「三笠先生」

呼ぶ声がして後ろを振り返る。

そこには、眼鏡をかけた中年の教師が立っていた。

彼は悠楽と隣のクラスの担任で、何故か悠楽に対抗意識を燃やす思い込みの激しい英語教師だ。

「はい？なんでしょう大森先生」

「あのですな、貴方のクラスの生徒がうちのクラスの生徒を殴ってしまった件について…」

「アレはもう解決したはずです。今更取り立てて騒ぐ事でも無いでしょう。それとも何ですか。貴方は執拗にその事に触れて余計に生徒同士の関係を悪化させたいと？現に貴方がとやかく言わなければあんなにややこしくなることも無かったんだ、きちんとそこをわかった上で教師として反省してほしいですね」

「…ぐッ…、…ふん、そうでしたな。失礼」

小声で「この若造が偉そうに…」と捨て台詞を残して去っていく大森を尻目に、悠楽はパソコンに再度目を向ける。


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表紙・目次

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