魔王
「お前に限ってそんな事は無いとは思うが…」

身体は横を向いたまま、目だけを玲二に向ける。

ナイフのように鋭いその視線を受け、玲二は自然と背筋を凍り付かせた。

「この件、言い触らしたりすんなよ。事が表面化しない以上、穏便に済ませたい。…本人がそう望んでいるようだからな」

教室内に聞こえない程度の声で発せられる言葉。

そこには三笠悠楽という人物の人間性が垣間見えた。

敏感にそれを感じ取った玲二は、笑顔を浮かべて言葉を返す。

「大丈夫スよ安心して下さい!学校一口が固い男を誰だと思ってんスか?」

「…福井とか」

「何で先生がボケてんスか!?しかも龍は全然口固く無いスから!俺がアイツに好きな娘漏らしたら、翌日クラス中から弄られましたからね!お陰でその娘にもフラれたしね!俺が龍に全面的な信用を置けなくなった瞬間ですよ!先生もアイツには気をつけた方がいいスよ!」

「…長々と忠告ありがとう。目が心なしか潤んでるぞ」

シリアスな場面においても、玲二の爆走は止まらなかったのであった。

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