魔王

そして言い争いの果て、遂に悠楽母が実力行使に移った。

「今日という今日は、あたしゃもうブチキレたよ！これがなんだかわかるかい!?あぁん！」

そう叫び、彼女は一枚の紙を取り出す。

一枚の紙ーー

ーー離婚届を。

「…ッ！…………。…じょッ、上等だヨ！お前みたいなクソババァなんてワタシには必要無いんだヨ、この馬糞ババァ!!」

「ばふッ…、ああこっちこそ上等だねデク野郎が！さあ判を押しな！さあ早く!!」

「あーハイハイ、いい加減しましょうね二人揃って馬鹿」

そこでとうとう我慢の限界が来た悠楽が割って入った。

離婚届をあっさりと奪い取り、ビリビリに破って丸め、ゴミ箱の方へ投げた。

放物線を描き、離婚届は見事ゴミ箱にホールインワンする。

それを確認してから悠楽は口元だけで笑い、言葉を発した。

「お二人さん…。近所迷惑を考えようか。それよか、離婚届ってそれ何回目だ？もう役所に顔馴染みだろうなあ？」