魔王
続いてチョークを一本手に取り、黒板に数式を書いていった。

「まず前の授業の復習からだ。黒板の問題わかる奴、いたら手を挙げろさもないと一番俺に近い席の奴が生贄として俺に捧げられる事になるぞ」

その顔で言われるとリアルに恐い台詞だ。

そして今回反応が一番速かったのは、学級委員の福井 龍(ふくい りゅう)だった。

「それは駄目です~。生贄によってパワーアップした魔王、略して生パア魔王は、ハンパなく強い…略してパナくつなんですからね~。因みにこのクラス内に勇者はいませんよ~」

「いいんだよ勇者はいなくて。その方が簡単に世界を手に入れ…って何話そらそうとしてんだ、ハイ問題解くのお前決定」

「うわァァ~しまったァァァ~」

叫びつつ龍は席を立ち黒板へ向かう。

勉強は割とできる方なので、特に苦もなく解くと手に着いたチョークの粉を払いながら自分の座席に戻った。

「よし、正解だ。わかっているものとして先に進めるぞ。理解できない奴はあとでみっちり、地獄のマンツーマンだ」

「えええええ!?」とか「そりゃねーぜジョニー」とか「殺される!生贄にされる!パナくつ魔王になるつもりなんだ!」とか聞こえてくる声を無視し、悠楽は手早く黒板の数式を消すとまた新たに文字を書き始めた。


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