魔王

一瞬、どう反応すればいいのか迷った。

え？丑の刻参りに？使う？人形？あの？丑の刻に？人形に？釘を？打ち込んで？なんとやら？っていう？

「…、…何のために？」

悠楽がやっとの事でそう言うと、女生徒ーー工藤 香奈（くどう かな）は、にっこり笑って返してきた。

「またまた御冗談を！さっきはっきり言ったじゃないですか、丑の刻参りに使うって！」

「『御冗談を！』じゃねーよ。寧ろ、御冗談であって欲しかったよ」

額に手をやり、ため息混じりで言葉を吐き出した悠楽。

すると香奈が笑顔を消し、真剣な表情になって言った。

「先生、何か勘違いしてません？私は人を呪うためにこれを作ってるんじゃないわ」

「…え、じゃあ…？」

悠楽が興味を持ったと判断したのか、香奈は笑顔を取り戻してこう答えた。

「呪いの類なんて存在しないと言うことを証明するために丑の刻参りをするの！これで呪った人に何も起こらなかったら、それがデタラメだという事が堂々と言えるでしょう？」

「…もう、…なんでもいいや」

多少お疲れのご様子で。