道化師と菫の花/GIADOOLⅣ
序章
アルフレッドに両親はいない。
いや、正確にはいるのかもしれないが、記憶にもなければ、会ったこともなければ、いないも当然である。
彼が育ったのは傭兵部隊の中だった。
金だけで人を殺す連中の中で、銃が彼のぬいぐるみであり、手榴弾が、彼のオモチャだった。
彼が始めて銃を撃ったのが、5歳のとき・・・。
・・・初めて、人を殺したのは8歳の頃だった・・・。
アトランテと虎神の小競り合いは、戦前から続いていたため、彼らみたいな傭兵は仕事にあぶれることは無かった。
一人殺せば、パンがもらえた・・・。
二人殺せば、スープがもらえた。
たった一枚の毛布欲しさに、家族全員を殺した・・・。
・・・殺しの善悪なんて考える余裕なんてありはしなかった・・・。
常に、彼の周りには死と血の香りが漂っていた・・・。
そんなアルフレッドが、彼を始めてみたのは、街頭テレビの映像の中だった。
・・・・・・・・殺意は一瞬で沸いた。
アトランテ帝国皇太子・・・アルテルド=リ=アトランテ。
歳の程は自分と同じぐらい・・・。
ソレだというのに・・・
彼はとても輝いていた。
脚光を浴びて、テレビの向こう側で、美味しそうに、見たこともない分厚い肉に頬張りついていた。