道化師と菫の花/GIADOOLⅣ
「!」
それは、海人の耳に突然飛び込んできた。
・・・・・でかいエンジン音・・・。
車や、ギアの音じゃない・・・。
・・・軍艦・・・・
数は・・・一隻か・・・でも、どうしてこんな何もない場所で・・・。
「キラ、悪いが、タバコ買ってきてくれないか?」
いやな予感がする。
まだ距離はあるとはいえ、確実に、あの艦はこちらに向かってきている。
この辺で、軍が来る用事があるとすれば、自分の所である可能性が高い。
・・・・・・虎神最新鋭のギア・ドール弁財天の破壊、小規模とはいえ、アトランテの研究施設の破壊・・・。
逆に言うなら、今まで軍に目をつけられなかった方がおかしかったのだ・・・。
ちっ・・・こう着状態の戦況では、一般人にまで手を回す余裕はないと思っていた考えが、甘かったな・・・。
「タバコ?別に暇だからいいけど・・・どうして、突然。」
やっぱり、こいつは気がついていないのか?
まったく・・・これでも元軍人か・・・すっかり、平和ボケしおって・・・。
「エエから・・・金は後で渡す。」
「・・・・うん・・・分かったよ・・・。」
最後まで不信そうな目をしていたが、キラはしぶしぶ外に出て行った。
・・・・・・・さて・・・自分の思いすごしであればいいが・・・。
思いながらも、海人は用心のため、自分の部屋から拳銃を取り出し、弾をつめる。
皐月に乗り込んで構えようとも考えたのだが、残念ながら現在の皐月は、作業用装備。
とても、戦闘に耐えられる状態ではない。
・・・まぁ、元々作業用に使っているギアなのだから、仕方ないといえば、仕方ないのだが・・・。