道化師と菫の花/GIADOOLⅣ

 小さく、狭い部屋。


 別に海人は、閉所恐怖症でもなければ、暗闇恐怖症でもないから、こんな場所に入れられようと、精神的におかしくなることはないが、やはり居心地がいいとは思わない。


「せめて・・・タバコぐらいあればなぁ・・・。」


 思わず言葉に出た。


「ほらよ。」


 そんな言葉を聞き入れたのかどうか、分からないが、どこからか出てくる、タバコが一本。


 まぁ、声からして、誰が渡してくれたのか、考えるまでもないのだが・・・。


「やけに良い身分になっとるな・・・。」


 イヤミをいいながらも、ちゃっかりアルクが差し出すタバコは受け取る。


「だったら、お前もなってみるか?軍人とやらに?最高だぜ。人を殺して金もらうんだ。」


 同じように、アルクもイヤミで返しながらも、ちゃっかり、海人がくわえたタバコに火をつける。


 自分もタバコをくわえ、戦艦の捕虜収容室の中に二本の紫煙が舞い上がる。


「遠慮しておくわ・・・ギアの腕には自信がないのでな・・・。」


 一応、軽くイヤミ。


 別に自惚れるわけではないが、自分のギアが常人外れていることぐらい分かっていての言葉。


「言ってろ。」


 そんな言葉で返された。


「・・・・・・・・・・・・所で、何が目的や?」


 急に声のトーンを下げて声を上げる。


 ここからが本題。


 こいつが、何の目的もなくこんなことをするとは、最初から思ってはいない。

< 28 / 42 >

この作品をシェア

pagetop