道化師と菫の花/GIADOOLⅣ

「昔さ・・・世話になった女がいたんだ・・・。」


 不意に、アルクが口にする。


 それは、遠い過去を思い出すような、感慨深い言葉。


 いや、実際に思い出しているのだろう。


 あの頃を・・・。


 誰にも話したことのない、自分の過去を・・・。


 別に、知りたいとは思わないし、知ろうとも思わない。


 生きているのだ。


 過去は誰にでもある・・・。


 ・・・それこそ、自分やキラみたいに、記憶をなくさない限りは・・・。


「そいつがさ・・・悪魔になろうとしているんだ・・・。」


 それだけですべてを理解した。


 戦艦・・・アルクの軍への復帰・・・


 そして、『悪魔』という単語。


 そこから想像できるものは、一つしかない・・・。


「・・・・・・人工知能は別に悪魔じゃないやろう・・・。」


 事実、成功例がまったくないわけではない。


 人工知能YURI・・・。


 今は、花屋を営んでいるキリトが愛した・・・ギア・ドール・・・。


 あいつの家から、百合の花の香りが漂わない日はない・・・。


「悪魔だよ・・・・。死んだ人間が、意思を持って、話して動く・・・悪魔以外に、どんな呼び方があるんだよ?」


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