道化師と菫の花/GIADOOLⅣ

「別に、正しいことをするだけが人生やないやろう?」


 そもそも、正しいこととはなんであるのか。


 神以外に、それを知るものはいまい・・・。


「そんな言葉で片付けるなよ。こっちは人生がかかってるんだ・・・。」


 もっともな言葉だった。


 こいつにしてみれば、その世話になった女性と言うのは、よほど大きな存在だったのだろう。


 だから、いかなるカタチでも助けたいと思う。


 しかし、彼女は死んでいる。


 死んでいる・・・と言い聞かせたいのだ。

「はぁ・・・。」
 
 それを聞いて、海人は大きくため息をつくと・・・


「・・・・・・・まぁ、オマエが、どんな選択を取ろうと勝手やけどな・・・。俺はいつまでも、ここでおとなしくはしとらんぞ。」


 武器は摂取された。


 身柄も拘束されている。


 しかし・・・それだけである。


 穴はある。


 抜け出す方法が、まったく残されているわけではない。


 もっとも・・・そんなことをしたら、今目の前にいる男と、今度は本気で殺しあわなくてはならないわけなのだが・・・。


「分かってるさ・・・。」


 アルクは、それだけ口にすると、海人に小さな金属を投げつける。


 それは・・・小さな鍵・・・・・。


 どこの鍵であるかは、考えるまでもないだろう。


 逃げたければ、いつでも逃げろ・・・というコトか・・・。



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