馬鹿になりたい


「馬鹿だろ」


俯いていた彼女が顔を上げた。

目が合う。

僕は目を逸らしてもう一度言った。


「馬鹿だろ」


すると彼女はあは、と乾いた声で笑って
だよね、と言った。

それから笑いながら


「でも私はもっと馬鹿になりたい」


と続けた。

声は全然笑ってなかった。


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