馬鹿になりたい


彼女はどうせ飲まないくせに、ミルクティーにシロップをいれてストローでぐるぐるかき混ぜた。

氷がカラカラと安っぽい音をたてた。


疑うことなんか知らないみたいに、
信じることしかできないくらいに、


「馬鹿になりたい」


そこで僕の怒りは最高点に達した。

あっそ、と吐き捨てた僕はアイスコーヒー代をテーブルの上に乱暴に置いてファミレスを出る。

振り返らなかった。

彼女が引き留めてくれないことくらい分かっていた。

情けない期待をするほど、僕は馬鹿じゃない。

僕は一口もアイスコーヒーに口をつけなかった。

そんなことすら多分彼女は気づいていない。

泣きそうだった。
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