月とバイオリン
 良い夢を呼ぶように微笑んで、メアリーアンはチョコレート色の扉を閉じた。

金色のノブの一部分がきらりと光って見えたのは、月を隠していた雲が風に流され飛んで行ったためだ。

月明かりが描き出した白と黒の絵画に組み込まれシェリーは、本物の絵の中の人物であるかのように身じろぎ一つせずに、大きなブルーの瞳を空の月から離さない。

入って来た風が髪を揺らして通り過ぎるが、それでも彼女は長い間をそのままで。
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