月とバイオリン
月明螺旋
石畳を車輪が回る音が遠ざかっていく。
角に灯火も消えるのを見送って、メアリーアンは踵を返して歩き出した。
一つ遅れてシェリーが追いかける。
「ごめんなさい、メアリーアン。私、我慢ができなくって。つい」
夜の通りに声は顰めながら、届かないことを恐れるように背伸びをしていた。
いつもよりもさらに足が速いのは、憤りの表れなのではないのだろうか。
「つい、って言っていつもフレディにも叱られるんだけど。ごめんなさい、心配かけちゃって。本当は」
「『わからないように戻るつもりだったんだけど』?」