月とバイオリン
 それでも放置していたのは怠慢だろう。

解決の時期というものは在るのだと、もちろん思う。

問題は自分がそれを忘れていたという事実、あるいはもっと悪い、恐れ遠ざけていたのかもしれないこと。

教訓として決して忘れはしないことを決めながら、シェリーの淀みのない言葉には慰められていた。

もっと、その言葉に相応しい自分でいなくてはならないとも思い。

「あなたなら彼の窓を開けるかもしれないって思ったのよ」

「役に立ったのかしら、私は。開けたと言うなら、窓を開けたのはリースだったわ。正確に言うなら、破った、になるけど」

がしゃん。

木枠が(リースが)降った瞬間の音を、鮮やかに思い出している。

落ちてきた人間がリースであったと判明した今となっては、一生忘れることはないと確信できるほどの衝撃と膨れ上がっていた。

「私、あんなに驚いたことってない。普通じゃないと思う、リースの行動って」
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