月とバイオリン
 この先の監視を強化しなくてはならないのは、こちらのお嬢さんの方だ。

とそう思いながらも、胸に満ちるのはあたたかさだった。

危険は危険として言い聞かせなくてはならないけれど、なぜだろう、シェリーなら大丈夫だと自信を持って言い切れてしまいそうなのだ。

守るものの確かさを感じる。

世界に守られている娘、そんな単純な夢のような言葉を本気で思い浮かべてしまう。

一緒にいるとやわらかな気持ちを思い出す、忘れたままでは寂しいものを。

「あ」


 小さくつぶやくと同時に、娘は足を止めた。誰より早く、その耳がとらえたものがある。
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