月とバイオリン
「窓くらいじゃ負けないわ。もう私の心が聴いているんだから」


 真っ白なカバーのかかった大きな枕を、シェリーは小さなこぶしで叩き、望む形に整えた。

金色の髪は神の御使いの羽の様に広がり、表面で水の滴を転がすように、月の雫を遊ばせている。


まだまだカノンは、追いかけるのをやめようとしない。

シェリーは夢見心地で立ち止まり、追い越され、追いかけて追いかけられた。

音は街に平等に降り注ぐけれど、感じ取るのは一つ一つの耳だった。











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