月とバイオリン
「フレディがいないとまったくの野放しだな」

 クリスは笑いながら息をついた。

あきれてもいるし、おかしくてたまらないらしい。

たいてい意地の悪いクリスは、フレディよりもシェリーの奇行の方に手を貸したりするのだから悪い人だ。

当然、度を越したりはしない分別と理性はあるけれど、ぎりぎりの量だから危なっかしい。

いつか計り間違えて全員で恐ろしい目に合うような気がしてしまって、私はずっと不安を抱えて暮らしていた。

ここに揃ったメンバーを見て、また改めて怖い気持ちになる。

フレディ、早く戻ってきてと願う気持ちは、シェリーやメアリーにも劣らないかもしれない。


 クリスを軽く睨み、シェリーは、

「もうしないわ。もうわかったから私は満足なのよ」

「そんな顔かな?」

「本当よ。先生が戻ってらしたら、紹介してもらえばいいんだし、その時はリースも誘うわね。お友達になれば、聴き放題よ」

状況を想像したのか、堪えられない風にふふふと笑う。

かと思えば急に真顔に戻り、

「フレディが帰ってきても知らせたりしないでね。心配するんだから」
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