月とバイオリン
フレディと『仲良くしている』私は部屋のカレンダーに彼の予定を書き込んでいた。それを頭に思い浮かべる。

聞き出した計画で正確に言うと、あと一日と十一時間で、船は彼を乗せて、サウザンプトンに到着するはずだ。

今回の旅は仕事上の書類の問題だと言っていた。

それならば予定の変更などは起こりえないと考えていいだろうと思い込み、私は残り時間を細かく割り出し続けていた。

もちろんその足でこのハウスを訪ねてくれるわけではないけれど、同じロンドンに居ると思えることは、気持ちを大きく盛り上げてくれる大切なワンポイントになるのだった。

「いないなら自分でなんとかするしかないのよ、リース。いないということ、これはすでに運命なんだから」

「避けられる運命なら避ければいいと思うわ」

私の言葉は家庭教師の小言のように流されて、シェリーは不服そうに言葉を続けた。

「メアリーは知っているのよ。だけど話さないのは、話していいことなのかの判断をするのはフレディだと思っているからなのね。もう。一緒に暮らしているのは私なんだから、ちょっと歩み寄ってくれてもいいのに」
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