月とバイオリン
 それは、……理屈が通っているとは言えないだろう。

メアリーアンの判断の中身を理解できるのなら、納得するべきところなのだと思うのだが、シェリーにかかるとそうは運んではいかないらしい。

「朝、ウォーレン先生のおうちに寄ってみたの。夫人に聞いたら、帰ってらっしゃる様子はないって。先生なら漏らしてくれそうなのにな」

「そう、でしょうね」

分類するなら、教授はクリス寄りの性質をしていた。物事を混迷に向かわせるのを喜ぶ類の。

いらっしゃらなくてありがとう、と、私は心の中で万歳を叫ぶ。

教授の存在一つで、物事はどうひっくり返されるかわかったものではない。

「フレディが戻るまでなんて待てない。もうカノンの部分一つの音だけでも聞こえたら、私は外に飛び出してしまう体になってしまったの。気になってたまらないー」
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