月とバイオリン
「シェリー、でも、確かめるなんて」

「危ないことはしないわ、もちろんよ。そんな顔で見ないで」

その言葉を、そのまま信じられたならいいのだけれど。


もちろん、危ないことはしない。


聞くのは初めてではなかった、私は。

今までも何度もシェリーはそう言い切って、直後しでかしたことを忘れたくても忘れられない。


 ヴァイオリンの弾き手を確かめること。

危険なことはなさそうな、音楽という優雅なものが相手となっている事柄だけれど、すでに屋根の上をさまよい歩くという危険は冒されている今回の一件。

危険の中へととび込んで行き、ないなら自ら作ってしまう、シェリーはまさしく何をするかわからない。

私は当然、不安になった。

シェリーには、『ただの毎日』はないのだろうか? ただ過ぎてゆく日常は。


「あのね、リース」

諭すような言い方をする。
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