月とバイオリン
 この家は通りの端に位置しているため、風通しがとても良い。

購入は現在も引き続いてご主人のピーター・シモンズ氏により、二十年前の出来事だと聞いているが、併せて聞いたお説いちいちごもっともで、大変に賢い買い物だったのだとうなずける。

将来的に変化する可能性の低い、大きな道路をサイドに持つ。しかし完全なる住宅地である故に、往来は広さのわりに騒がしくはならない。

住み心地が良く離れがたいのか住民の移動が少なく、いつしか形成された小さなコミュニティの、シモンズ氏は現在の中心人物であった。

 家に同居しているもう一人のシモンズは、ピーターの孫娘にあたるご婦人だ。

シェリーの滞在期間のお世話役となっている彼女がいなければ、シェリーはこの家に招かれることはなかった。

ミス・メアリーアン・シモンズは、シェリーの兄、ミスタ・フィデリティの親しい友人である――という言い方をこの国ではする――のだ。
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