月とバイオリン
楽しい話を交わしているように、微風に花びらを揺らし合っている。

一重で平咲き、花径六センチ、軽く甘い香りを持ち、気まぐれにアプリコット色の花を混ぜて咲かせることもあると言うが、目下のところは一色だ。

確率はクローバーの四葉ほどかもしれない。


 朝夕行うアプリコット探しを無収穫に終えると、シェリーはブルーベルの葉に気を配りながら足を進め、カップが四客も載ったならいっぱいになってしまうような小さなテーブルと、種類の異なる四脚の椅子がばらばらの方向を向けて置かれたキューブの中央――やや左寄り――に到着した。

このスペースだけに丸く、タイルが敷かれている。

元は何かが描かれていたらしいが、今では読み取れるものはない。

足踏みにかちかちと応える音は澄んでいて美しく、ピーターの大切な絵の名残かもしれないと考えると、ますます対話は楽しいものになっていた。
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