月とバイオリン
公的機関に勤める彼が、任務の内容は明かさないままベルリンへ向かった日から、二日が過ぎようとしている。

決して触れようとしないフレディに、シェリーも尋ねることはしなかった。

自分が何も知らないままでいることが、彼の心の平穏に大いに関わっていることを、最近では自覚していることでもあるし、知らずにいれば危険なことではないのだと思うこともできる。

危険な事情を知ってしまった自分の行動を、自分は抑えることができないので、これでいいのでしょう。一人で乗り切る、それをあの人はできるのだから。


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