月とバイオリン
 メアリーアンもまた、事情に踏み込まないままにフレディを送り出していた。思考過程を辿ってみたなら、まったくシェリーと同じものを見るのだと思われる。


その彼女は今、寝室へと向かう途中の、シェリーの部屋からもれる光に足を止めたところであった。

階下の居間でおやすみなさいを聞いてから、二時間近く経過しているのに、と首を傾げ、すみれの彫られた扉をノックする。

応える少女の声に、優しくくすぐったいような気持ちになった。


このままの生活がずっと続いてもいいわ。


そんなフレディの立場を失くす考えを抱きながら、メアリーアンは扉を押した。
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