月とバイオリン
誰かに聴かせるためではなくては、あれだけ切ない音は出せない。

持論は極論かもしれない。

けれどそれは心に沁みたいくつかの演奏とそれを奏でた人物に、裏切られたことのない法則だった。


 過去の確かな記憶に助けられ、少し、自信は取り戻される。

力を抜き、彼から外したシェリーの目は、マントルピースの上でとまった。


 写真。

記録された過去の時間。

引き寄せられるように足は動き、迷いもなく、手は一枚を選び出した。



「この子だわ」
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